大岡山キャンパス 西5号館・西6号館の竣工と附属科学技術高等学校の計画

 大岡山西5号館・西6号館の竣工

那須聖(平成6年卒/本学准教授)

  かねてより報告しておりました建築学系の移転先である大岡山キャンパスの新校舎、西5号館と西6号館が竣工しました。後述する附属科学技術高等学校の移転に先駆けた建築学系の移転のために、2018年春に学内の再開発推進室、安田幸一教授、竹内徹教授、塩崎准教授、那須の研究室で2棟の検討が開始されました。2020年春から久米設計・総合設備コンサルタントにより実施設計が行われ、2021年秋からの敷地の既存建物の解体の後、2022年春からフジタ(建築)・栗原工業(電気)・三建設備工業(空調衛生)により本体工事が行われ現在に至ります。それぞれ、大型実験施設と上部の研究室の複合であることから鉄骨鉄筋コンクリート構造の低層部と鉄骨構造の上層部を組み合わせた建築です。西5号館は70周年記念講堂と呼応する製図室のヴォールト屋根が、西6号館は南側の共用廊下を覆い、グランド側のフェンスと日射調整を兼ねたアルミエキスパンドのファサードがそれぞれキャンパス内の新たなランドマークとなり、北側の東急線側には歩道整備と合わせて、百年記念館から西6号館へ連なる地域への顔を形成することを期待しています。

東側テラスから見る70周年記念講堂と本館時計塔 西5号館4階製図室
   
東急線側の外観
(手前が西5・奥が西6)
西5号館 西6号館

 

 附属科学技術高等学校の大岡山キャンパスへの移転

村田涼(平成9年卒/本学准教授)

 現在、田町にある東京工業大学附属科学技術高等学校を、大岡山キャンパスへ移転する計画が進められています。2014年に大学改革推進の一環で田町キャンパス再開発検討部会が設置され、高校と大学の連携の推進、高校施設の老朽化への対応、3つのキャンパスの総合的な利用を背景に検討が重ねられ、緑が丘地区に新校舎を整備することとなりました。建築学系からは塚本由晴教授、斎尾直子教授、村田涼准教授、佐々木啓助教、金箱温春特定教授が参画し、附属高校の教職員や本学施設運営部らと共に2020年に基本構想書を策定し、基本設計からは石本建築事務所が加わり、2026年4月の開校に向けていよいよ建設工事が始まる予定です。

 本学の附属高校は国立大学法人で唯一の専門高校であり、応用化学、情報システム、機械システム、電気電子、建築デザインの5つの分野でカリキュラムが構成されています。そのため、校舎には普通教科等の一般的な教室に加えて、機械工場や製図室といった各専門分野に特有の施設や空間の活用が求められました。そこで、附属高校の生徒や先生方の協力のもと、研究室の大学生も加わり、高校の空間・生活の参与観察やワークショップを通して現有施設の特徴や課題を共有し、さらには、新しい高校のあり方を共に考える勉強会を行ってきました。

 まるで大学のミニチュア版のように専門分野ごとの独自性が色濃い附属高校の諸機能を有機的につなげ、さらに、緑が丘の豊かな自然を活かすため、新校舎のデザインは「五感を刺激することでクリエイティビティを高め、互いのパフォーマンスがよく見える学校空間」を構想の中心的なコンセプトとしています。学年や各分野のゾーンの周囲に「コモン」空間を様々に配置し、少人数やグループ学習など一斉授業にとどまらない多様な学習形態に応え、また、「見る・見られる」構成を積極的に織り込むことで、生徒の新たな気づきを生み、学習意欲を向上させる居場所づくりが意図されています。さらに、既存の地形を利用し、樹木の間を縫うように配置された分棟型の校舎には、自然採光や通風、地中熱利用、再生材の活用、大学キャンパス内のエネルギーシステムの連携など、環境デザインの側面からも意欲的な取り組みがなされています。その先導性が評価され、国が主導する「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」に選定され、今後の展開が期待されています。


新校舎の完成予想パース(芝生広場からの外観)