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緑川光正先生の瑞宝中綬章受章のお祝い

石原直(平成7年卒/本学教授)

 今年(2023年)の春の叙勲において、緑川光正先生(北海道大学名誉教授)が瑞宝中綬章を受章されました。主要なご経歴である「元 (国研)建築研究所 理事長」としてのご活躍などが認められての受章です。建築研究所に在籍経験のある筆者から皆さまにご報告させていただくとともに、緑川先生の建築研究所でのご活躍を中心に紹介させていただきたいと思います。

 緑川先生は、東京工業大学工学部建築学科を1973年に卒業、1979年に同大学院博士課程を修了され、同大学での助手を経て、1980年に建設省建築研究所に入所されました。

 建築研究所では建築構造、特に鉄骨造の分野を中心に研究等に従事されました。1989年に国際地震工学部に異動され、地震工学分野の研修に貢献されました。第三研究部に異動後の1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では、構造研究室長として被害調査の中心的な役割を担われました。被害も踏まえ、住宅等を対象とした免震等の研究に中心メンバーとして取り組まれ、「免震住宅設計ガイドライン(案)」を作成されました。2000年に免震建築物に関する告示が公布・施行されましたが、その検証方法の整備にも関わられました。これらのご功績により2003年に文部科学大臣賞(研究功績者)を受賞されました。2002年には研究専門役に昇任され、日米共同研究等に関して所の代表的・先導的な役割を担われました。特に地震時の浮き上がりを許容することで損傷抑制を目指した建築構造の研究に精力的に取り組まれました。若輩者であった筆者も研究の一部を担当させていただき、多くのことを学ばせていただきました。

 2005年に建築研究所を退職され、北海道大学大学院教授に就任されてからは、豊富な学識と経験を活かして研究や後進の教育に取り組まれました。研究成果に関しては、2012年に日本建築学会賞(論文)を受賞されました。

 2016年に大学を退官され、2017年に(国研)建築研究所の理事長に就任されました。建築研究所が現在地に移転してから約40年が経過したことも踏まえ、各種施設の老朽化対策や実験装置の更新にも尽力されました。また、内閣府の大型研究開発予算を先導して新たに獲得し、防災への各種センサーの活用や、脱炭素に資する中高層木造建築物の実現に向けたさまざまなイノベーション技術の社会実装を加速させました。年頭の所内のご挨拶などでは所員に向けて失敗を恐れず挑戦するよう促され、また所員の研究・調査等の内容に関しても豊富なご経験を踏まえたご示唆等を要所で与えて下さいました。また理事長として組織運営を担われながらも、国土交通省をはじめ国内外の各種委員会に学識者として参画され、行政の円滑化や建設分野の発展等に貢献されました。

 緑川先生は現在も学識を生かして日本鋼構造協会会長等としてご活躍されています。今回の受章を改めて皆様とお祝いし、緑川先生の益々のご健康とご健勝をお祈りしたいと思います。