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瀧口克己先生の瑞宝中綬章受章のお祝い

堀田久人(昭和59年卒/本学教授)

 2023年秋の叙勲において、瀧口克己先生が瑞宝中綬章を受章されました。誠におめでとうございます。皆様にこの慶事をご報告させていただきますと共に、先生の御経歴、数ある業績の一端をご紹介しながら、皆様と共にこの慶事をお祝いしたく存じます。

 瀧口先生は、1967年本学理工学部建築学科を卒業、1972年博士課程を修了され、黒正清治先生の助手を経て、1973年名古屋工業大学に講師として赴任され、1977年 同助教授、1984年には本学工学部建築学科に助教授として戻られ、1988年に教授に就任されております。1994年には、ご自身その立ち上げに大変ご苦労なさったと述べておられる情報理工学研究科情報環境学専攻の教授を務められ、その後、評議員、情報理工学研究科長、経営協議会委員など要職を歴任、本学の発展に多大な貢献をされました。2010年に本学を定年退職され、名誉教授の称号を授与されておられます。

 先生の学位論文は「鉄筋コンクリート部材を対象とした有限要素法による二次元非線形応力解析法」です。その後も「鉄筋コンクリート柱の2軸曲げ」、「主筋の付着の有無の影響」、鈴木敏郎先生との共同研究である「主筋のないSC部材の開発研究」等、一貫してコンクリート系複合構造の研究に取り組まれ、その成果は高く評価され、「コンクリート系複合構造部材の非線形挙動に関する一連の研究」にて1987年度日本建築学会賞を授与されておられます。また、同じく鈴木敏郎先生との共同研究である「小氷塊コンクリートの開発研究」も新聞やTV等多くの報道機関で取り上げられました。

 一方で、本学の助教授就任の折から、原子力施設におけるコンクリート製圧力容器の安全性に関する研究に着手され、本研究テーマは、定年退職後も継続される先生のライフワークの1つになっておられるようです。日本建築学会では構造委員会の傘下に原子力建築運営委員会を立ち上げられ、現在も主査を務められています。また、日本原子力学会では2015年、福島第一原子力発電所廃炉検討委員会内に建屋の構造性能検討分科会を立ち上げ6年間は主査を務めるなど、事故炉に係わる活動も積極的に行っておられます。日本機械学会では、「コンクリート製原子炉格納容器に関するシビアアクシデント時の構造健全性評価ガイドライン」の作成に係わり、2017年度日本機械学会標準事業表彰・貢献賞を授与されておられます。 

 これら一連の研究テーマにより、20余名に及ぶ博士号取得者を輩出されたことも先生の著しい業績のひとつといえましょう。また、先生は受章のコメントで「私にとって、東工大では、課外活動の一つである空手部が相応に重要です。18歳で入部して以来、60年の付き合いであり、故郷のような存在です。」と述べておられます。

 齢78歳にして尚現役で活躍され続ける、頭脳と体力は、先生が永年継続されて来られた研究と空手の賜物でしょう。先生の益々のご健勝をお祈りいたしますと共に,今後とも後進への叱咤激励をお願い申し上げます。