オープニングパーティーにおけるOB諸氏によるクリティーク
 最新の技術を使ったすずかけ台キャンパス超高層免震研究棟

和田 章(昭和43年卒/本学建築物理研究センター 教授)

地震災害を受ける度に、建物と地盤の間の縁を切っておけば被害がなくなるのではないかという考えは、我が国だけでなく多くの史実にあります。これが免震構造のルーツですが、本格的な建物に免震構造が適用されるようになったのは1980年代からです。基礎と建物の間に設置する積層ゴムは建物を安定に支持しつつ、地震時に前後左右にゆっくり変形します。鋼材ダンパーやオイルダンパーもここに設置され、揺れの拡大を抑え、地震入力エネルギーを吸収します。すずかけ台キャンパスに最新の技術を使った超高層免震研究棟(20階、91.25m)が完成しました。免震層には16個の積層ゴム、14個のスティールダンパーおよび2個のオイルダンパーが設置されています。免震構造の採用により、16本の柱(CFT)は建物外周にのみ配置され内部には柱がないため、平面計画の自由度を高めています。この建物のように幅に比べ高さの高い建物では、地震時の揺れで積層ゴムに引張力が生じることが懸念されます。四隅の積層ゴムの設置法に新しい技術を用い、基礎から柔らかく2cmまで浮き上がり得るようにし、積層ゴムに引張力が作用しにくくしました。両妻面に大きなX型の形状で鉛直方向に設置された筋違は、高さ方向の剛性を高める効果があり免震構造としての性質が良くなります。この筋違は、重ねてデザインとしても高度な建築技術を表現しています。