建築材料研究所−工業材料研究所−応用セラミックス研究所の70年

和田 章(昭和43年卒/本学建築物理研究センター 所長)2004.12

1934年3月に我が国の単科大学初めての附置研究所として建築材料研究所が設立され、2004年にその70周年を迎え、30周年および50周年に倣い70周年記念祝賀会を10月21日にすずかけ台ホールにて開催しました。建築材料研究所は、1943年1月に設立された窯業研究所と1958年3月に合併し工業材料研究所となり、1996年5月には全国共同利用型研究所として改組され応用セラミックス研究所として現在に至っています。このとき学内措置として建築物理研究センターが組織され、4名の教授、4名の助教授、3名の助手の構成で建築材料研究所時代からの建築材料、建築構造に関する研究を発展させています。

建築材料研究所、工業材料研究所時代に卒業された皆様には、年代に応じて変化する大学の様子を知るのは難しいと思います。工業材料研究所は大岡山キャンパスの南のトンネルの先の石川台にありましたが、現在、我々のグループはすずかけ台キャンパスにて研究活動を進め、同じキャンパスに拠点を置く大学院総合理工学研究科の環境理工学創造専攻・人間環境システム専攻の大学院教員として、修士課程、博士課程の教育を行っています。2003年に始まった文部科学省の重点研究拠点COE21「都市地震工学の展開と体系化」にもほとんどの教員が関係して研究教育活動を続けています。

最近の卒業生には建築材料研究所が創設された時代のことは、70年も前のことですから知りようがないと思います。手元に2代目の所長を務められた小林政一先生のご業績をまとめた追悼録があり、藤岡通夫先生が建築材料研究所の始まり当時のことを書かれていますので、引用させていただきます。

「昭和9年に東京工業大学に建築材料研究所が創設されて、小林先生は3月1日付で、所員を兼任された。この当時は現在のように民主的制度はなかったので、この研究所が創設された経緯は明らかでないが、伝えられるところによると、昇格後間もない東京工大に、研究所を一つ設立しようとの動きがあり、なるべく全部の学科に共通の場とするためには、建築材料がよかろうとのことで設立されたらしい。そしてこの提案者はおそらく小林先生であったと思われる。東京工大の昇格当時の目的は東京帝大の工学部のように科学に重点をおいたものではなく、実学中心にすぐに役立つ技術者を育てようということにあったから、研究所の性格もおのずからその方向を志向したと思われ、小林先生らしいねらいであったようだ。」

70周年を記念して論文集「セラミックスと建築材料」を出版しました。ご希望の方がおられましたら、お送りします。