東京工業大学緑が丘 1 号館レトロフィット  

竹内 徹(昭和57年卒/本学建築学専攻 助教授)

昭和42年以降、諸先輩方が学んできた緑が丘1号館の建物も満40歳を迎えました。3年前に耐震診断を行ったところ、柱のせん断補強筋が不足し、大地震時には壁の少ない2階で層崩壊に至る危険性があることが判明し、建築学専攻の安田幸一助教授と自主的に改修設計を始めました。従来の耐震改修では建物の外観が醜くなってしまうケースが多く見られます。本改修では地震のエネルギーを吸収する制振ブレース(低降伏点鋼座屈拘束ブレース)とルーバー・ガラスを組合せ、従来の強度型耐震補強を超えるレベル2地震に対する設計を行うと共に、建築学科の建物に相応しい外観の質を維持し、環境的にも一年を通じた熱負荷の低減を目指しました。南面のルーバー、ガラスは夏の日射を遮蔽して冷房負荷を低減すると共に、冬の日射を室内に導き、ガラス部分を通して庇に当たる日射による熱を内部に蓄える半開放型のダブルスキンを構成しています。エネルギー吸収型のブレースを用いることにより部材を細く抑えるとともに追加の杭基礎を不要とし、ルーバー、ガラスを含めたコストを通常並に抑えました。幸いに提案に際し予算が付き、平成17年度に無事改修工事を終えることができました。改修に際しては、トイレ・リフレッシュルーム、低層部のサッシュを新しくし、消防設備・配管類の更新を合わせて行っています。一方、先輩方が多くの時間を過ごした製図室は旧来の景観を保っています。本改修設計は2006年度日本構造デザイン賞、第5回リフォーム&リニューアル設計アイデアコンテスト最優秀賞などの評価をいただくことができました。改修に際しご協力いただきました方々に深く感謝いたしますと共に、是非久しぶりに学び舎を訪ねていただけると幸いです。