進化する東京工業大学大岡山キャンパス       

安田 幸一(昭和56年卒/本学建築学専攻 助教授)

 去る10月15日、大岡山キャンパス整備計画の説明会が百周年記念館会議室にて行われた。2003年から本藏義守理事・副学長を中心とした企画室施設整備班で検討を重ねてきた大岡山キャンパスの大きな方向性を示したマスタープラン(案)が報告された。続いて今年度中に発注予定となっている本館前桜並木まわりの環境整備計画についての詳細な説明も行われ、大岡山のキャンパスの将来展望について活発な議論がなされた。

 現状の大岡山キャンパスの問題点は3つの項目に集約される。

1.人と車が分離されていない。   
2.緑が少ないイメージがある。
3.本館前の桜の寿命がきている。

 以上の問題点を改善すべく、また大岡山キャンパスの新しい顔をつくるために以下のような環境整備計画案を企画室施設整備班は作成した。

○桜並木中央の歩道デッキと緑豊かなキャンパスイメージの創出

 本館正面の軸を中心として桜並木中央に新しい歩行者専用デッキを計画する。デッキ材は、歩行者が常に歩行する中央部は強硬度コンクリートパネルを採用した。桜の木周辺は南洋材のウッドデッキである。ともに桜の根を極力傷めないようにデッキのスパンを通常より大きくすることにより基礎の数を最小限とした。老齢化した桜は切り戻し剪定を採用することになっている。切り戻し剪定を行うことによって本館の視認性も改善される。さらに新規に桜の苗木を現在の並木の外側に一列植え、将来は桜並木の新旧交代を図る。

 本館前西側の斜面の芝生広場は、夕方まで陽が当たり東工大の学生が集う唯一の心地よい外部空間である。桜並木中央に歩道を新たにつくることで、この芝生広場が本館前までつなぐことが可能になった。現在アスファルト鋪装部分は芝生で覆い、緑豊かなキャンパスのイメージを強く印象づける。本館がバックにそびえる芝生斜面は東工大を印象付けるシーンとなりうる。

 さて、たとえ本館前から車を追放しても、迂回した車が、例えば西9号館と本館との間の道を通行する交通量が増加すれば、学生への危険度はかえって増大することになり、解決策にならないという危惧もある。交通計画はさらなる検討を要するため、今年度工事では、出口ゲートから第一食堂までの道路を対面交通可能にし、図書館前の道路は残すことで芝生広場下の交通量の増加を回避することとした。

 今後も大学の将来像についてのより深い議論がなされ、東工大キャンパスがより魅力的に生まれ変わることを期待する。