緑が丘に学生寮が復活しました

安田幸一(昭和56年卒/本学教授)

 2017年9月に「東京工業大学緑が丘ハウス」が開寮しました。冬夏会の会員のみなさまはご存知ですが、この寮が建設された緑が丘地区は大岡山キャンパス全体では西端に位置し、建築学系の本拠地です。歴史を振り返ると、今の校舎が建つ前には、元々木造の学生寮(向岳寮)が建っていました。今回の緑が丘ハウス建設は、「緑が丘に学生寮が復活した」と思う大先輩方も大勢いらっしゃると思います。

 寮が建設される背景としては、大学での学生寮の需要が急速に高まっていることがあげられます。正規の留学生や短期間での交換留学生が昨今急速に増加してきており、また地方の女子学生数も増加しています。本学でも大学キャンパスの外で学生寮を確保するよう努めてきました。横浜青葉台には男子学生用の松風学舎、洗足には女子学生用の洗足池ハウス、一昨年には大岡山のひょうたん池の隣に建っていた職員寮を女性留学生用の寮に改修しました。今回の緑が丘ハウスは、新築でのオンキャンパス学生寮であり、英米、中国の大学のように学生が安心して勉学に集中できる環境を整備することとなりました。

 

敷地は、建築学系の緑が丘1号館と道路に挟まれた西向きの斜面地です。土工事を最小とし、道路線形に沿って南北に細長く配置することが最も有効でありました。個室を西向きに道路境界に沿って並べるように配し、東側にキッチン、水周りなどの共同スペースを設けています。各個室は8uという最小スペースとして、南側からの自然光と通風を摂り入れ、周辺住宅との距離が近いことから道路の向かい側の住宅との見合いを避けるため、個室を雁行させる平面レイアウトを提案しています。敷地ラインが途中で折れ曲がるため、建築も平面的に途中で折れ曲がっています。外断熱を採用し、コンクリートの長寿命化を計るとともに夏季の熱対策と冬季の熱損失を抑えています。そのため内部は化粧打放しコンクリートやコテ押えなど簡素な仕上げが可能となっています。平面が雁行することによって、内部廊下の空間が豊かになり、中央の吹抜け部周辺に学生同士が話をできるダイニングテーブルや畳の小あがりを設けました。また吹抜けに面して造作で学習テーブルを用意し、個室に閉じ籠ることなく他の学生たちとの交流を促進し、共同で生活する「同じ釜の飯を食べる」ことの大切さを知って欲しいとの願いが込められています。

■東京工業大学緑が丘ハウス
デザインアーキテクト:安田幸一研究室、竹内徹研究室
総括・監理:東京工業大学施設運営部
設計:アール・アイ・エー

所在地:東京都目黒区緑が丘1-9
主要用途:寄宿舎(大学)63室
建築主:東京工業大学


雁行する西側ファサード

2層吹抜けの共有リビングダイニング