東京工業大学附属図書館が大岡山キャンパスに完成

安田幸一(昭和56年卒/本学教授)

 2011年10月、本学大岡山キャンパスにおいて創立130周年記念式典が開催され、記念事業のひとつである新附属図書館もめでたくグランドオープンいたしました。新しい時代の先導的電子図書館への移行を視野に、快適な学習・調査機能とレファレンス機能を充実し、本学の研究成果を広く世界に発信するべく、2008年夏に計画がスタートしました。旧図書館の耐震補強工事を行う予定でしたが、コンクリート強度が極度に不足していることが判明し、急遽新築で大岡山キャンパス内に建替えることになりました。建築学専攻(構造は竹内徹教授)は敷地選定段階から施設運営部・佐藤総合計画に全面的に協力させていただきました。

  大岡山キャンパスには本館をはじめ、70周年記念講堂、事務局1号棟、百年記念館など近代建築史においても重要な建築が桜のプロムナードを取り囲んで建っており、さらに一昨年には大岡山駅前広場に面して卒業生や地域社会との交流を目的とした東工大蔵前会館(設計:坂本一成研究室、日建設計)が本館から桜のプロムナードを通り北へ真っ直ぐに伸びる軸線上に建設されました。このような大先輩方のつくってきたキャンパスの風景を大切にしながら慎重な場所選定に入りました。図書館は、学内の学生・研究者のみならず地域社会や国際社会と連携しながら活発な教育・研究活動を展開するための「学び」の中心であるため、新しい図書館も利便性を重要視し、大岡山駅前の正門から東急電鉄の線路に対して平行に伸びる軸線と、本館正面からの軸線との交叉する場所に大きな広場をつくり、新図書館本体はその地下につくることとなりました。この場所は大岡山キャンパスの中心であり、動線の結節点と呼べる場所でもあります。また、緑の豊かな広いオープンスペースが待望されていた場所でもありました。

  地下2層の新図書館閲覧室は、基本的にワンルーム構成とし、集密電動書架も開架になっています。階高を抑えながら充分な天井高を確保し、地下外壁は極力ドライエリアを取り、屋内側にレンガを積み二重壁とし、湿気対策を行っています。本館からのアイストップとして「緑の丘」を設け、将来は蔵前会館とブリッジで繋ぐよう準備を施しました。この丘の下部の1階部分は図書館事務となっており、書物などの搬出入は正門を通らずに北側の接道から直接行うことができます。

  地上部には「学習棟(通称:チーズケーキ)」がV字型の柱に支えられ、空中に浮かび上がり、正門から見ますと透明感のあるアイストップとなっています。屋上面と幅広の縦型日除けルーバーには太陽光発電パネルが仕込まれ、技術更新のため将来交換できるようなポケッタブルとなりました。

 新図書館が大岡山の新しい学生の活動の中心となり、周辺の将来施設計画とも連携し、キャンパス全体を有機的につなぎとめ、再構築する大きな布石となることを期待しています。