グローバルCOEプログラム 「震災メガリスク軽減の都市地震工学国際拠点」採択

時松 孝次(昭和49年卒/本学建築学専攻 教授)

 平成19年から文部科学省において開始されたグローバルCOEプログラムは、平成14年度に発足した「21世紀COEプログラム」の基本的な考え方を継承しつつ、我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化し、国際競争力のある大学づくりの推進を目的とし、優れた教育研究拠点を重点的に支援する事業です。人文・社会科学から自然科学までの学問分野を10分野に分類し、平成19,20年度にそれぞれ5分野ごとに公募が行われました。平成20年度公募された[機械、土木、建築その他工学]分野へは、78大学から合計106件の申請があり、書類審査とヒアリングを経て、東工大建設系から申請した「震災メガリスク軽減の都市地震工学拠点」が他の13件とともに採択されました。地震工学を旗印にした採択課題は我が拠点のみです。

  わが国の大都市は、人口・産業・情報の集中により、都市機能が複雑化・脆弱化し、巨大地震や直下地震などによる大きな震災リスク(震災メガリスク)を内包しています。これは、世界の大都市共通の問題であり、グローバルレベルで、都市生活の持続可能性が脅かされています。さらに、近年の地震により、長周期地震動、重要施設の機能停止にともなう被害の波及など、震災の巨大化を加速する新たな課題も明らかとなっています。巨大化する震災は日本経済を破綻させるばかりでなく、世界経済にも重大な影響を与えるといわれています。このような課題を解決して、より安全・安心な社会を形成するためには、都市の耐震化を進めるための創成・再生・回復技術を統合した新たな都市地震工学研究の推進、ならびに震災メガリスク軽減のための技術と戦略を世界各地で実践展開できる研究教育者・防災技術者の育成が不可欠となっています。

  本GCOEプログラムでは、世界的に増大する震災メガリスク軽減のため、都市地震工学センターのもとに、教育、研究、国際的社会貢献を推進し、世界の地震工学の教育研究をリードする都市地震工学国際拠点の形成を目指します。

  教育面では、世界でリーダーシップをとれる防災専門家の養成を目標とし、優秀な留学生を受け入れる国際大学院特別コースを開設し、さらに、学生の国際性を高めるため、英語集中訓練、海外インターンシップによる外国の大学への派遣、外国人招聘教授による専門科目授業などのカリキュラムを整備します。また若手研究費の配分、国際会議への積極的派遣など若手育成施策も実施します。

  研究面では、地震に強い都市の創成・再生・回復技術を統合化した震災メガリスク軽減のための「都市地震工学」として、(1)新たに顕在化した震災の巨大化を加速させる問題にも対応できる「地震防災イノベーション技術」、(2) 既存大都市の多様なメガリスクの軽減に有効な「都市耐震リノベーション技術」、(3) 巨大震災から早急に都市機能を回復させる「都市災害マネジメント技術」の研究を、国内外の機関等とも連携して推進します。

  国際的社会貢献面では、米国太平洋地震工学研究センター (Pacific Earthquake Engineering Research Center,略称PEER、カリフォルニア大学バークレイ校を含め9大学が参加)との連携を基軸として、北南米、アジア、欧州などの各機関との協力体制を強化し、人材交流、共同研究、世界各地でのOJTや共同調査、復興協力を含む幅広い教育・研究活動の高度化、効率化を図ります。また、国際会議・若手研究者WSの開催、成果をまとめた英語教材作成などにより、成果の積極的な情報発信、技術移転を図るとともに、研究者交流・研究者ネットワーク構築を推進します。さらに、成果を技術者や一般市民に発信するため、都市地震工学データベースの構築やホームページの充実とともに、都市地震工学談話会、市民講座なども定期的に開催します。

  震災軽減は、日本が世界から期待されている活動分野です。このプログラム推進のためには、学内の事業推進者、協力者の連携はもとより、国内外の研究者の連携協力が必須と考えております。図1は、古くから、日本ではナマズが地震の根源と考えられ、その影響を抑えるためには、多くの技術と人の連携が必要であることを示しています。同様に、このプロジェクトを推進するためにも、多くの人の協力と参画、アイデアが必須です。関係各位のご支援とご協力をお願いする次第です。

 プログラムの詳細は、ホームページ(http://www.cuee.titech.ac.jp)をご覧ください。

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