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小野英哲先生を悼む

三上貴正(昭和55年卒/東京工業大学准教授)

 建築材料構法の研究、特に建築部位の性能評価方法研究の第一人者として長い間ご活躍された東京工業大学名誉教授・東北工業大学名誉教授、小野英哲先生におかれましては、平成30年6月9日に逝去されました。享年78でした。

 小野先生は、盛岡生まれの仙台育ちでした。昭和41年に東北大学工学部建築学科を卒業後、同年、同学科助手になられました。昭和44年に東京工業大学工学部建築学科助手に転任されました。昭和50年には「体育館の床の弾力性およびその評価方法に関する研究」により東京工業大学から工学博士を授与されました。昭和52年には、この研究により日本建築学会賞(論文)を受賞されました。昭和53年には建築学科の助教授に、昭和62年には同学科の教授に昇任されました。在任中、昭和56年にはワシントン大学(シアトル)交換助教授、平成8年からは東京工業大学文教施設研究開発センター長を務められました。平成13年に定年退任後は、平成21年まで東北工業大学工学部建築学科教授を務められました。平成19年には「床のすべりの測定・評価技術の開発と適用」により日本建築学会賞(技術)を受賞されました。

 小野先生は、建築物床の性能評価方法研究の草分けであった東京工業大学名誉教授、吉岡丹先生を師と仰ぎ、多くの床性能評価方法を考案・体系化されました。また著作と諸活動を通じ、性能評価の概念と性能評価方法の普及に努められました。一連の研究成果はJISなどの公的規格にも規定され、よりよい床の実現に広く貢献しています。

 小野先生は、お仕事にはきびしいかたでしたが、お仕事を楽しむかたでもありました。日ごろ「おれはなあ、むずかしい本を読むより、からだを動かして、ものを作るのが好きなんだよ」とおっしゃっていました。お写真のように、年配になられてからも、いろいろな試験機を自ら作ったり、直しておられました。

 小野先生は、義理人情に厚く、愛嬌がありました。学生のころ部活動をやりすぎて苦労して卒業されたせいか、慕って集まってくる落ちこぼれぎみの学生にはやさしく接してくださいました。学生の意欲を保つためか、よく学びよく遊べ、も実践しておられました。研究の合間には、本職()のバドミントンのほか、卓球、釣りなどを学生と楽しまれました。

 小野先生に出会えたことは、わたくしにとってかけがえのない宝物であります。小野先生の薫陶を得た門下生の多くも思いは同じかと存じます。

 小野先生は、長い間、一生懸命に頑張られたので、晩年はたいぶお疲れになったのではと思います。これからは天国で、吉岡先生やお仲間と大好きなお酒を心ゆくまで楽しまれ、ゆっくりお過ごしいただきたいと思います。

 謹んでご冥福をお祈りいたします。