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岸田英明先生を悼む

青木雅路(昭和54年修士修了/竹中工務店技術研究所)

 岸田英明先生が、2014年11月16日に満81歳で逝去されました。ここに謹んで心より哀悼の意を表します。

  先生は1933年2月14日に東京都大田区に生まれ、1956年3月東京大学工学部建築学科を卒業、同大学院に進学され、1961年3月に学位論文「杭基礎に関する研究」により工学博士の学位を取得されています。そして、建設省建築研究所に1961年4月から1969年10月まで勤められたのち、東京工業大学工学部建築学科の助教授に就任され、1981年8月には同教授に昇任されています。なお、建築研究所時代にはカナダに留学され、杭基礎の世界的研究者として著名なマイヤホフ先生にも師事されています。

 東京工業大学を1993年3月に退職された後も、東京理科大学の教授として2004年3月まで教育活動に従事するとともに、国内、海外の超高層建築物やパイルド・ラフト基礎等の多くの特殊な基礎や新しい基礎の技術指導もされていました。

 先生の研究成果は、「杭」を基礎構造と位置づけるとともに、地盤に強制変位を与える打込みに対応する排土杭(Displacement Pile)と強制変位を与えない場所打ち杭や埋め込み杭に対応する非排土杭(Non-displacement Pile)の概念を導入し、施工法で異なる杭の支持力を力学的に説明したことが大きいと思います。この成果は、国際的にも高く評価されています。また、これらの功績により、1980年に日本建築学会賞(論文)を「砂質地盤における杭の支持力」により受賞されています。

 学会活動では、建築学会の建築基礎構造設計規準・同解説(1960,1974)、建築基礎構造設計指針(1988,2001)等、半世紀にわたり建築の基礎構造分野の指導的研究者として活躍しました。また、地盤・基礎分野の専門学会である地盤工学会では、建築分野の代表的研究者として積極的に取り組み、会長も2000年から2002年まで務められています。

 先生の功績として、多くの優秀な人材の育成をされたこと、特に、建設会社の研究所にて活躍している基礎構造の研究者が多いこと、が挙げられます。先生は、正月、自宅に研究室の学生とともに卒業生も呼んで新年会を開いていました。建設会社各社が本設地盤アンカー工法の実用化開発を競った90年代には、各開発グループの主要研究者が集まるとの状況でした。現在でも、建築学会で改定中の建築基礎構造設計指針では、主査である千葉大学中井正一教授をはじめとして、研究室の教え子が多数参加し活躍しています。

 学会、教育界および産業界の発展に多大な業績を残された先生に対して感謝申し上げるとともに、多くのことを学ばせていただいたことに深く感謝し、ご冥福をお祈り申し上げます。