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藍澤宏先生のご逝去を悼む

三橋伸夫(昭和49年卒/宇都宮大学教授)

 藍澤先生におかれては、2010年末に体調を崩し入院されましたが、2011年2月11日に治療の甲斐なくご逝去されました。その直前、ご本人の強い意思により教職を辞されました。退職後、長年の功績にもとづき東京工業大学名誉教授に就任され、また、正四位瑞寶中綬賞を授与されています。享年64歳でした。
 先生は、東京都のお生まれで、東京工業大学建築学科を卒業後、同大学院に進学され、青木志郎先生の研究室で農村計画を専攻して、1974年12月に工学博士の学位を取得されました。1975年11月社団法人農村生活総合研究センター研究員(1983年4月より主任研究員)を務められた後、1983年11月に母校に戻られて助教授となり、1993年9月教授に昇任されました。藍澤研究室では、1984年度から2010年度の27期にわたり、2011年3月の研究室最後となる4名の卒業生を含めて110名余の学生を社会に送り出されました。
 先生の専攻は農村計画学および建築計画学です。農村計画学では、農村地域の土地利用計画および農村集落の社会計画に関する研究分野で多くの業績を残され、1999年には「集落を単位とする質的地域構造分析とモデル化の手法に関する研究」に対し農村計画学会賞(論文)が授与されました。日本建築学会農村計画委員会ならびに農村計画学会で長年にわたり指導的役割を果たされ、農村計画学会では学会長を務められました。他方、建築計画学の分野では、東京工業大学教育環境創造研究センター教授、およびセンター長として、小中学校から大学まで幅広い学校教育施設の計画に関して多くの意欲的な研究を指導されました。どちらの分野でもフィールドワークを重視し、まさに日本全国をくまなく歩いたと言っても過言ではありません。現地で会った方々の話や経験など質的データと、アンケート調査や統計資料という量的データとを結びつけて分析、解析する、先生独特の職人技とも言える研究方法を築き上げられました。
説明: E:\藍澤先生.jpeg 先生はご自宅では草花を慈しみ、愛犬と戯れる穏やかなお人柄であった反面、農村生活総合研究センターで一緒に仕事をさせていただいた時期には、ロングピースとアルコールをこよなく愛する豪放な面も持ち合わせておられました。アルコールがもとで何度か入院を経験され、大学に戻られた後は煙草も酒もきっぱり断たれたのですが、完治はせず、ご病気と闘いながら驚異的な精神力を発揮されて教育、研究に当たられたのでした。「俺はもう一生分の酒は飲んでしまったよ」とおっしゃって、学生との飲み会ではジンジャエールを愛飲されていたとのことですが、あながち誇張ではなかったのかもしれません。今頃は天国で忘れかけた煙草と酒をほどほど嗜んでおられるかもしれません。
 ご冥福をお祈りいたします。