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平井聖先生の瑞寶中綬賞受勲のお祝い

藤岡洋保(昭和48年卒/東京工業大学大学院 教授)

  今年(2009)の春の叙勲で、平井聖先生(東京工業大学名誉教授・冬夏会会長)が瑞寶中綬賞を受勲された。先生の長年の建築史研究の成果や、城跡や町並みの整備事業、それらの研究成果の社会への還元などが評価されてのことで、大変喜ばしいことといえる。

  平井先生は、東京工業大学建築第1課程を1953(昭和28)年にご卒業後、すぐに助手になられ、1962(昭和37)年に工学博士を取得されて1963(昭和38)年に助教授、そして1974(昭和49)年に教授に昇任された。1983(昭和58)年からの6年間は、東工大工学部付属工業高校(現・東工大付属科学技術高校)の校長として、同校の教育改革の重責を担われた。長年教育・研究に尽力された後、1990(平成2)年に東工大を定年退官された。その直後に昭和女子大学に教授として移られ、同大学では、2003(平成15)年から07(平成19)年まで学長兼大学院委員長を務められた。現在は同大学国際文化研究所で特任教授として研究を続けておられる。

  対外的な活動にも積極的に関わられ、文化財保護審議会専門委員第二専門調査会)や同審議会委員として文化庁の保存行政に助力されたし、石川県や金沢市、山形市、北海道松前町など、地方自治体からの文化財保存活用の方策についての指導の依頼に応じて、現在に至るまで、ご多忙にもかかわらず、精力的に指導を続けておられる。

  先生のご専門は、日本建築史、それも特に住宅史で、書院造の成立過程の研究や、日本住宅史の体系化などの業績により、日本建築学会賞(論文、1967)や日本建築学会賞(業績、1987)を受章されている。

  また、それらの成果を社会に還元することにも心を配られ、長年NHKの大河ドラマの建築考証を担当してこられたことは、多くの方がよくご存じの通りである。

  今回の受勲は、それらの業績が認められたということであり、その慶事をお祝いすべく、東工大と昭和女子大の平井研究室卒業生の代表が祝賀会の開催を平井先生に打診した。平井先生は、最初は遠慮なさったが、お世話になった方々にお礼をいう場として位置づけられるならば、というお言葉をいただけたので、平井研関係者のうちの数人が中心となって事務局をつくり、祝賀会の準備を進め、10月2日(金)に新装成った東京工業大学蔵前会館(坂本一成名誉教授と日建設計の設計により、大岡山駅前に今年5月に竣工)のくらまえホールでの開催にこぎ着けることができた。平井先生のご意向を尊重し、先生の東工大在職中の建築学科卒業生や文化財保存行政の関係者を中心に、広くご案内を差し上げたこともあって、会には山出保・金沢市長や田中郁三・東工大元学長をはじめ、248名という、多数の方々のご参加をいただくことができた。これも平井先生のご人徳のおかげと感謝したい。

その会場には、函館の町並みなどを描いた、平井先生の水彩スケッチが長さ10mにわたって展示され、列席者の目を引いた。それらの作品を平井先生が冊子にまとめられたものが会終了時にお土産として参加者全員に配られた。それだけではなく、縦書きの垂れ幕を含め、この種の会としては趣がやや異なるものになったが、それは平井先生のご意向が反映されたもので、不手際があったとするならばそれは事務局の至らなさのゆえ、とご理解いただければ幸いである。

今回の祝賀会開催にあたっては、多くの方々のご協力をいただいた。中でも宛名シールの印刷や案内メールの送信などで、冬夏会事務局には大変お世話になった。全面的なご支援をいただけたことが会を予定通りに開催するうえで大きなバックアップになったといってよい。大変ありがたいことで、この場を借りて御礼申し上げたい。