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追悼 小林啓美先生

翠川三郎(昭和50年卒/本学人間環境システム専攻 教授)2004.12

小林啓美先生におかれましては、平成16年6月2日78歳で逝去されました。先生は昭和22年東京工業大学卒業後、直ちに谷口忠先生の助手を務められ、昭和32年に助教授、昭和40年には教授に就任され、昭和61年のご退官までの39年を本学で教育研究に携われました。その後は、大学入試センター副所長として3年間、共通1次試験の実施運営に当たられ、日本工業大学教授として6年間、教育研究に当たられました。

先生は本学の運営にも熱心に取り組まれました。大型計算機の全学的な利用のために設置された総合情報処理センターの初代センター長をお勤めになり、教務部長時代には入試や管理業務に電算機を積極的に導入されました。また独立大学院である総合理工学研究科の創設にもご尽力され、研究科長も努められ、本学の新しい動きに数々の貢献をされてきました。

 研究面では、建築物の地震応答解析、地震動の破壊力の指標、地震動に及ぼす地盤特性の評価、震源モデルを考慮した地震動予測手法、地下構造調査に基づくやや長周期地震動の評価など、建築耐震学から地震学に至る幅広い領域で、常に新しい問題に取り組まれました。私自身、個人的には、観測という事実からいかに真実を見つけだす事が重要かを先生から教えていただきました。大学院生の頃、地震の波形を飽きるほど眺めろと言われ、何が面白いんだろうと思いながら眺め始めると、地震記録にもそれぞれの顔があることに気がつきはじめました。教員に立場が変わった今、先生と同じことを学生に言っている自分に気づくと、先生にご指導いただいた学生時代をしみじみと思い出します。

小林先生は冬夏会を愛し、冬夏会の新年会に出席することを大変楽しみにされていました。新年会で「よう、元気か」と肩をたたかれた方も少なくないかと思います。先生が逝去されてから半年以上が経ちましたが、今でも「よう、元気か」という先生の暖かい大きな声が聞こえてくるような気がしてなりません。どうぞ安らかにお眠り下さい。