都市地震工学センターの活動   

翠川 三郎(昭和50年卒/本学人間環境システム専攻 教授)

 建築学科では、従前から耐震構造の研究が進められ、数多くの研究成果を生み出してきました。これらの実績も踏まえて、東工大建設系から文部科学省の21世紀COEプログラムに「都市地震工学の展開と体系化」を申請し、平成15年度から実施されています。これについては既に2004年版冬夏会会員名簿で報告されています。このプログラムの開始にあわせて、1923年関東大震災の80周年にあたる2003年9月1日に本学に都市地震工学センターが設立されました。

 都市地震工学センターの下には、本学の地震工学関係の教員が結集し、COEプログラムの推進を行うと共に、「首都圏大震災軽減のための実践的都市地震工学研究の展開」のプロジェクトも進めています。首都直下にM7クラスの地震が起こる確率は今後30年間で70%と高く、このような地震が発生すれば、1万人以上の死者や100万棟に近い全壊・焼失建物、100兆円を越える経済的被害が生ずるものと予想されています。また、東海地震が発生すれば、東京は長周期地震動に襲われ、高層ビルなどの長大構造物に大きな影響を与えることも予想されています。

 本プロジェクトでは、このような首都圏の震災を軽減するために様々な研究を進めています。一例として、長周期地震動による高層ビルの室内での室内物品の挙動を解明する研究があげられます。そのために、2次元大変位振動台を導入しました(図1)。振動台の大きさは3m×2.5m、積載荷重は1tonと小ぶりですが、±1mの変位が再現でき、変位の大きさだけでいえば、世界最大級のものです。また、図2に示すような可搬型VR装置を利用して地震災害を体感し防災意識を高めるための防災教育の研究も開始しつつあります。これらの研究を通じて、安全で安心な社会の構築に貢献したいと考えています。

図1 2次元大変位振動台
図2 可搬型VR装置 ( 完成予定図 )