緑が丘のグローバライゼーション  

塚本 由晴(昭和 62 年卒 / 本学建築学専攻 助教授)

毎年秋の新学期が始まると、緑が丘キャンパスに新しい留学生達がやってくる。諸外国では年度の始まりが秋学期からなので、本学の国際大学院コースや YSEP などの留学生向けのプログラムもそれに準じているためである。この留学生のほとんどが、はじめに参加する授業に、建築空間計画特論がある。この授業は外国人非常勤講師を招聘して全て英語で行われるもので、私は数年前からこの授業の窓口教員として、世界の建築デザインの第一線で活躍する建築家、研究者を招聘し、授業内容をとともに立案し、実行する任をとらせていただいている。毎年異なるテーマのもと、2週間から1ヶ月の短期集中ワークショップを行い、東京の都市空間の調査をもとにした都市の変化のシナリオの描出、それに沿った都市空間、建築空間の提案を行う。いくつか例をあげると、昨年はオランダのデルフト工科大学からライアン・リトー氏とヴィール・アレッツ氏を迎えて、歌舞伎町や銀座などの典型的な繁華街に、居住の要素を付加する提案を行った。このときはデルフト工科大学との共同だったので、オランダの学生も20名ほど来日し、緑が丘キャンパスはいつになく賑やかだった。彼らのキャンパスでの振る舞いはやはり日本人の学生のそれとは違っていたのが印象的だ。ヨーロッパの広場文化が体に内蔵されているのだろう、例えば外部のちょっとした段差や階段によく腰掛けて議論していた。その輪に加わっている日本人の学生も良く見られた。つい2週間前に終わったばかりの今年はオスロで活躍するボスニア人建築家、アドナン・ハランバシック氏の指導のもと、築地魚市場が移動したあとの広大な跡地計画のための、都市デザイン戦略の立案を行った。このワークショップは、発表も議論も全て英語なので、日本の学生が戸惑うかと思いきや、逆に非常に張り切っている印象を受ける。普段は使わない脳を英語が刺激するからなのか?留学生との密な交流が多視点的な都市へのアプローチを促すのか?いずれにせよ、この授業に参加すると、現在のグローバライゼーションの一端を、緑が丘にいながらにして肌で感じることができる。そのことが今、実は何よりも学生の意欲を引き出しているのではないかと思う。