東京工業大学21世紀COEプログラム
「都市地震工学の展開と体系化」採択          

建築学専攻 教授 時松孝次 (2004.3)

1.はじめに

 文部科学省による新規事業として、平成14年度から21世紀COE(Center of Excellence)プログラムが開始されました。このプログラムは、我が国の大学に世界最高水準の研究教育拠点を形成し、研究水準の向上と世界をリードする創造的な人材育成を図るため、5年間にわたって、重点的な支援(1件あたり年間1〜5億円)を行い、国際競争力のある個性輝く大学づくりを推進することを目的としています。

 人文・社会科学から自然科学までの学問分野を10分野程度に構成し、平成14,15年度にそれぞれ5分野ごとに公募が行われました。平成15年度公募の[機械、土木、建築その他工学]分野へは、78大学から合計106件の申請があり、書類審査とヒアリングを経て、東工大建設系から申請した「都市地震工学の展開と体系化」(プログラムリーダー:人間環境システム専攻教授大町達夫)が他の22件とともに採択されました。

2.COEプログラム「都市地震工学の展開と体系化」の概要

1995年の阪神淡路大震災以降、社会の防災力向上に向けた種々の提言、研究、施策がなされてきましたが、残された課題も多く、またその普及には、学問と実務の有機的連携が不可欠です。本学は地震工学分野に多数の研究者を擁していますが、所属は大岡山の4専攻(建築学、土木工学、国際開発工学、情報環境学)とすずかけ台の2専攻(人間環境システム、環境理工学創造)に分散しています。そこで、本プログラムでは、本学の総力を結集し、この分野で日本を代表する世界最高水準の教育研究拠点を形成することを目的としています。研究教育を強力かつ効率的に推進するため、「都市地震工学センター(Center for Urban Earthquake Engineering)」を、関東大震災80年にあたる平成15年9月1日に設置しました。

 現代都市を、モノ(都市施設)、ヒト(市民)、社会(都市システム)の3要素に分けてみると、各要素のいずれもが、老朽化、高齢化、複雑化などの問題点を抱えており、ひとたび大地震に直撃されると、未曾有の大災害や世界的波及が危惧される状況です。そこで、本プログラムでは、先端的技術で防災都市づくりをめざす都市防災先端技術、安全で快適な都市への再生をはかる都市再生防災技術、及び両者の推進戦略を構築する都市防災技術戦略、という3つの研究課題に取り組むことにしています。

 教育面では、世界をリードする防災専門家の輩出を基本方針とし、都市地震工学アカデミックコースと実践コースからなる博士課程特別コースを本年4月から開設の予定です。本コースの大部分の学生や優秀な若手研究者は、COE研究員として雇用され、技術英語力訓練、国際会議への派遣や国内外の研究機関での研修援助、研究費の配分など、多彩な支援が受けられるようになっています。

「都市地震工学センター」では、欧米先進国の先端研究機関との国際共同研究の実施、国際シンポジウム等を企画・開催し、若手研究者や大学院生を含めた国際交流を積極的に行います。また、アジア圏に存在する巨大都市、開発途上国の人口過密都市における地震防災技術の向上のため、地震工学セミナーなどを実施し、国際的な貢献も考えています。

地震防災技術を実効あるものとするためには、国内外の行政機関、研究機関、産業界との連携が不可欠であり、これらの組織と一層の協調を図り、都市地震防災対策の実践展開を目指します。さらに得られた知見を、公開セミナー、インターネット都市地震工学講座開設などにより広く開示し、一般市民への防災教育を推進する予定です。

プログラムの詳細は、ホームページ(http://www.cuee.titech.ac.jp)をご覧ください。

 関係各位のご支援とご協力をお願い致します。