新国際大学院プログラム(デザインコース)の採択について

藤岡 洋保(昭和49年卒/本学建築学専攻 教授)

 2006年に大学院の留学生用の新しいプログラムが文科省から発表された。それは海外在住の外国人のためのもので、大学から申請された新規プログラムを文科省が審査し、認可を得た大学に対して、書類審査および面接試験で選抜された者を国費留学生として受け入れるというものである。その教育は、講義を含め、すべて英語で行うことが前提とされている。その背景には「競争原理の導入」がある。つまり、外国からの国費留学生の受け入れに対して、文科省は全国の国立大学を平等に扱うのを基本方針にしていたが、それに代えて従来の実績や申請プログラムの審査をもとに、国費留学生枠を重点配分する方式にしたということである。東京工業大学も応募し、それまでに与えられていた国費枠(1年分)の約2倍の68人分が認められた。そのうちの5人が建築学専攻分である。他のプログラムは複数の専攻がまとまってグループをつくって申請するというやり方だが、建築学専攻だけは単独のプログラムで、専攻別の人数で見ると、もっとも多くの国費枠を与えられたことになる。

 また、東工大の他の専攻のプログラムがすべて修士・博士一貫教育(従来の5年より短期間に学位が取れるようにする制度)であるのに対し、建築学専攻は修士課程2年間分だけのプログラムで申請し、認められた。それは建築学専攻に関しては、これまで海外、それも特に欧米からの留学希望が多く、博士号取得よりも、日本、とりわけ東京に滞在してそこで行われている建築を研究したいというのが彼らの希望であり、それに対応したプログラムをつくることがニーズにかない、いい学生も集まるだろうという判断によるものだった。その判断は正しかったと見てよい。というのは、他専攻がヨーロッパからの1人をのぞいてすべてアジアから選抜されたのに対し、建築学専攻は、ヨーロッパから3人、アメリカ、オーストラリアから各1名が合格したことにはっきりと示されている。応募はアジアやアフリカからもあったが、ポートフォリオの審査などを経て、そのような結果になったということである。合格者の出身大学はいずれもそれぞれの国の有名大学で、具体的にはデンマーク王立美術大学、ウィーン工科大学、ラ・ヴィレット建築学校(パリ)、イェール大学、メルボルン工科大学である。上記は国費枠だが、別に私費枠でミラノ工科大学から1名(イスラエル)が合格している。

 合格者は2007年10月の入学で、すでにその教育プログラムがはじまっている。建築学専攻は、デザインコースに関しては、従来から英語でも開講する講義をそろえているので、基本的にはそれで対応し、あわせて「Architectural Tour」(建築史実習の大学院版)、「Architectural Workshop 1」および「同2」を新設した。このうち「Architectural Workshop 1」は江戸・東京の歴史や、日本建築史の初歩を講義するとともに、キャンパスの外に出て、実地にそれらの歴史を伝える建物を見、東京の都市空間のありかたを考えるものである。「同2」はインターンシップを組み込み、都内の著名設計事務所の見学や、夏休みに1〜2ヶ月都内の設計事務所で研修するプログラムを想定している。母国の有名な大学を優秀な成績で卒業し、日本の建築に興味を持っている学生なので、この研修に関してはぜひ卒業生の方々にご協力をお願いしたいと考えている。