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仙田 満先生が栄誉ある日本建築学会大賞を受賞

和田 章(昭和43年卒/本学名誉教授)

 本学名誉教授 仙田満先生が栄誉ある日本建築学会大賞を受賞されたこと、まことにおめでとうございます。冬夏会としても、とても嬉しいニュースであります。御功績の表題は「地球環境、こどもの成育環境等における環境デザインの研究、設計、教育、社会活動に対する貢献」であり、仙田先生が長年にわたり取り組んでこられた活動が認められました。

 仙田先生は、1963年から64年の東京工業大学建築学科の卒業研究で谷口吉郎先生に、卒業後は菊竹清訓先生に師事され、1968年に独立して環境デザイン研究所を創設し、約50年にわたり建築設計活動を行ってきました。教育面では1984年に琉球大学教授、続いて名古屋工業大学教授、東京工業大学教授を務め、2005年に東京工業大学定年後にも愛知産業大学教授、放送大学教授として研究・教育を続けてこられました。個々の建築設計を超えた環境デザイン領域を確立しただけでなく、こどもの成育環境、地球環境と建築に関わる領域において多くの御業績を残されました。

 仙田先生は、建築・造園・都市を一貫して考えることの重要性を常に主張し、こどもの環境デザイン、ユニバーサルデザイン、地球環境デザインなど、環境デザインの領域を確立されました。これらの成果が認められ1978 年には毎日デザイン賞を受賞し、環境デザインの領域が世に広く認められる契機となっています。多くの大学に、建築・造園・インテリア・プロダクト等を融合した環境デザインの領域の学科が創立されましたが、仙田先生は多数の著書、建築作品を通して、この分野の開拓、研究、設計、教育に貢献してきました。

 こどもの成育環境、なかでもあそび環境のデザインと研究において、国際的に大きく評価され、国内でも1996年に茨城県自然博物館の設計で日本造園学会作品賞を、1997年に愛知県児童総合センターの設計で日本建築学会賞作品賞を受賞されています。研究分野では日本建築学会、日本造園学会、日本都市計画学会などで多くの論文を発表し、日本建築学会霞が関ビル記念賞を受賞し、著書「子どものあそび環境」は国際交通安全学会賞を受賞されています。また近年では日本学術会議において分野横断的なこどもの成育環境分科会を設け、4つの提言を政府に提出しています。

 日本建築学会の活動では主に地球環境委員会に所属し、委員長を務めただけでなく、地球環境建築憲章の起草委員長として建築系団体の五会の意見をまとめ、これを制定しました。この活動について日本建築学会より地球環境建築シリーズ4 冊を企画し、日本の地球環境に関するデザインガイドラインとして、建築界全体に多大な貢献をされました。また地球環境に配慮した建築を数多く設計し、日本では京都アクアリーナが環境建築賞を、また中国・佛山市岒南明珠体育館は亜熱帯の環境建築としてIOC/IAKS 金賞、ARCASIA 金賞を受賞されています。

 2001年6月から2003年5月には日本建築学会会長に就き、建築博物館を設立し、社会貢献組織として、司法支援建築会議、まちづくり支援建築会議の構想、設立に参画されました。2005 年より最高裁判所の裁判の迅速化に係る検証に関する検討会委員として建築紛争の短縮化のための具体的な提案を行っておられます。その後は日本建築家協会会長に就き、建築士法、基準法改正について、契約書の重要性やインターンシップ制度継続教育を定着させることに貢献されました。

 仙田先生の活動は非常に幅広く、わが国の環境デザイン分野のパイオニアとして、研究、設計、教育、社会活動等と多面的に活動し、多くの業績を残され、建築に関する学術・技術・芸術の発展と向上に大きく貢献されました。

 仙田先生は学長だけではなく施設運営部の方々と深い関係を築き、本学の伝統であるが、大岡山キャンパスおよびすずかけ台キャンパスの構内美化と新しい建築の設計に、本学の建築関係の教員が良いかたちで関わる仕組みを作って下さったことにも、次の世代を継ぐ教員として感謝しなければなりません。

 

すずかけ台キャンパス研究棟(仙田先生設計)